「おい、我が社は今、金がない。それは分かるな。そして、この見積もりではまだまだ甘いからもっと相手と話し合え」
「分かりました。先方と調整して値切って見ます」
「『値切れ』とは言っていない」
「えっと……この値段の見積もりでこちらの要求がキチンと網羅出来ているかを確認すればいいのですね?」
「違う。要求の網羅は出来ているからそこは問題ない。ただ、我が社は今、予算的に厳しいので、内容を削減することが無いようにしつつ、見積もりの中で値段が下げられる所がないかを探してみろと言っているのだ」
「それは『値切る』とは違うのですか?」
「全く違う」
「すみません。見積もりの中に余分に工数が積まれている部分や、余計な経費が積まれていないかを再確認しろということですね」
「分かってないな。俺は、予算が厳しいので、なにか見積もりの中に見落としがないか確認しろと言っているんだ。たとえばこの作業に関しては我が社の今までの見積もりが甘くて本当はもっと値段が低い可能性がある」
「となると、調整の結果、実はもっと工数がかかっていたと判明した場合は」
「もちろん。今まで通りの値段でやってもらう。そこを間違えるなよ」
「つまりは、値段を下げられる部分が無いかを確認しつつ、値段が増えそうな部分に関してははぐらかすのですね」
「それだと値切っているだけだろ。俺は、予算が無いので調整しろとしか言ってないぞ」
「馬鹿を言うな。予算がないってことは時間もないんだ。今すぐ電話して調整することで見積もりを下げられるだけ下げておけ。ただし値切るなよ」
うーん……日大のがマシかも知れねえ。