黙祷の時間に家に居たくなくて、スーパーに向かった。30分は居るつもりだったのにレジに並んだのは2時半過ぎで、あー微妙な時間に掛かっちゃったな、などと思う。レジ打ちに差し掛かったときに店内放送が鳴って、本日3時からエントランスホールで催しがあります、ぜひお立ち寄りください、そんでこのあと黙祷があります、と言った。やっぱり黙祷かぁ、急いで店を出ようかと思ったが、戻った車中でひとりその時間を迎えるのもいたたまれなかった。そのためにスーパーに、来たっていうのに。
結局わたしは、いちばん場違いと思える場所をさがして、店内の百均コーナーにたどり着いた。マスキングテープの棚を眺めているとき、また店内放送が鳴って、みなさま、まもなく黙祷の時間で、云々。さっきのアナウンスとは違う落ち着いた男性の声で、たぶん店長が喋っているのだろう。ことの重大さに震えた。そして、黙祷、の声。
百均を選んで正解だった。周囲の客も、有線の薄っぺらい音楽も、止まることはなかった。わたしはマスキングテープの棚の一角を見つめながら、じっとしていた。
黙祷厨ってちょっとうざいよね あいつらいつまでやるんだろう? 阪神大震災のことは綺麗さっぱり記憶から消えているのに?