2017-06-25

うんこ

 「わたし達って、うんこみたいだね」

 

 彼女は泣きながら――いや、涙を流しながらも、笑顔でそう言った。

 

 思えば僕たちは、はじめからうんこみたいだった。

 出会った時から――いや、出会う前からだろうか。

 もしかしたら、生まれた時からうんこだったのかもしれない。

 

 20年と少し前、僕たちは別々の場所で生まれてきた。

 それこそ、うんこみたいに。

 うんこほとんど変わらない方法で生まれ、そして泣いた。

 よほど嫌だったのだろうか。

 それとも嬉しかったのだろうか。

 

 別々の場所で生まれた僕たちは、別々の場所で育ち、別々の場所生活をしていた。

 奇跡でも起こらない限り、そんな僕達が出会うはずはなかったのだ。

 

 しかし、奇跡というのは、まるでうんこみたいにそこら中に転がっていたようで。

 

 ある時僕は、一人暮らしを始めた。

 同じタイミングで君も、一人暮らしを始めた。

 そして僕らは出会った。

 

 部屋を出たときたまたま君と出会ったのだ。

 

 僕は恋に落ちた。

 君を好きになってしまった。

 

 しかし臆病な僕は、いつまでも君にこの気持を伝えることが出来ずにいた。

 

 何年も、何年も。

 

 君への思いはときに高ぶったり、収まったりを繰り返しながら、いつまでたっても出そうで出なかった。

 

 しかしある時、君の方から僕に声をかけてきたのだ。

 それはただの挨拶だった。

 初めての挨拶だった。

 それがきっかけで、僕の君への思いは溢れた。

 溢れて漏れた。

 

 ずっと前から好きだったこと。

 気持ちの波が周期的に襲ってきていたこと。

 それが今漏れ出していること。

 

 すべてを伝えた。

 

 そしたら君は泣きながら、笑いながら言ったのだ。

 

 わたしもおなじだ、と。

 

 

 

 飽きた。

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