外の世界は刺激でいっぱいなはずだった
人間はもちろんのこと植物や動物が共生した都市群という舞台を前に、僕らの感受性はインターネットの巨躯の下、掻き消されてしまった
スマートフォン上に覆いかぶさる広告らは欲求を満たさせようと僕らをしつこく誘い、満たされた僕らの関心はもはや外界へと向けられることがなく、更なる飢えをしのごうとそれへとのめり込んでいく
もはや美しさへの関心はない、巨大資本の陰りで暗澹に満ちた視界はポルノを映すのみだ
仕方ない、美しさに刺激なんてないのだから、何かが心に浸透していく感覚も、この世界で得られるものに比べたらちっぽけなものだ
でもそれでいいのだろうか、僕らはここにいないのに
ほんの数十センチ下に視界をズラせば、そこには感覚が詰まった足と、リアルな地面が、ここに溶け込んだ僕らの自我を呼び覚ます
192kbpsの音声は、鳥と風と雨音に置き換わり
もういいんだよ、あっさりとした気持ちでスマホなんて捨てて、ああ今日も天気が良いななんて虚空に向かって呟ければ、それでいいはずなんだ