そこは日本有数の大都市で、メインストリートの整備された街並みには、広めの歩道に彫刻が並び、ところどころにベンチもあります。
昼間は空き缶を集めているようです。
夏は夜になるとベンチに横になっているようですが、冬の夜は歩き回っているようです。
いつも独りで黙してる姿しか見たことがありません。
いつみても、彼には周りの世界が視界に入っていないかのように見えました。
ある夏の晩に、ベンチで横になっていた彼に酔っ払いが罵声を浴びせていました。
別に彼が何かをしたわけではありません。
それでも、彼はいつものとおり、世界に自分しか存在していないかのごとく、微動だにせずにベンチに横になっていました。
酔っ払いは連れになだめられて去って行きました。
彼は相変わらず微動だにせずにベンチに横になっていました。
ただ、手が少し動いてお尻を掻いているようでした。
彼はこの生活を何年続けているのだろうか?
地下鉄の駅へ歩きながらそう想っていました。