路上ライブとは邪知暴虐を体現したアーティスト様が騒音をまき散らし、無辜の民を嬲り倒すことだ。
今日も近所の駅が惨劇の現場となった。アーティスト様が音という名の暴力を無差別に振るい、何の罪もない通行人を苦しめていた。
警察も、路上ライブという災厄に手をこまねいている。かくして平和なはずの駅前が、一瞬にして酸鼻極まる光景へと変転した。
私はこの光景にひどく心を痛めた。実は一度、アーティスト様の凶行をやめさせようと試みたことがある。
しかしアーティスト様に人の心がわずかでも残っているなら、路上ライブという愚行に及ばないのは火を見るよりも明らかだ。
幸いそのときは負傷したり殺されたりせずに済んだ。しかし一歩間違えば、大けがを負ったり命を落としたりしかねない状況であった。
命は確かに大事だ。しかし我が身が可愛いあまり、人々が路上ライブで苦しめられているところから目を背けた私の行為は糾されるべきではないのだろうか。
そういうことを考えて昏倒しかけた。