2016-02-10

地獄「道」のはなし

大勢の人の助けをかりたのに、

最後最後まで大切な人に迷惑をかけ、

多くの人を裏切り自殺してしまった俺は、

無数に存在する地獄のなかでも比較的軽い、

「道」という地獄行きが決定した。

その地獄は、ただひたすら道を歩くこと。

鞭でたたかれるわけでもなく、

目玉を抉り出されるわけでもなく、

ただひたすら、道を歩く。

この道は乳白色でやや温かみをおびた道で、

それ以外はうすいミドリの壁がひたすら続いている。

歩くぐらいどうってことない、そう思うだろう。

辛いとしても、足が痛いとか、無限に続くからだ、

とか、安易想像をめぐらせているんだろう。

地獄はそんな甘くない。

この道を歩いていると、

俺の今まで生きてきた20年間で

人に与えられた優しさ、ぬくもり、愛情

たった今目の前にあるように思い出してしまうのだ。

俺が生まれときの両親の喜ぶ顔、

生まれたての俺を抱きしめるばあちゃんのぬくもり

初めて歩いたときの俺を、親父が感動して写真をとる姿

受験反抗期だった俺に、

美味しい夜食を作ってくれたかあちゃん。

辛いとき励ましてくれた友達

いつも俺の身を案じて、

最後最後まで俺のそばにいてくれたアイツ。

言い出したらきりがない、みんなからもらった愛情

全部、全部、思い出してしまうんだ。

俺の身体に、その瞬間の感動がよみがえってしまうんだ。

なんで

なんで

なんで俺は自殺なんてしてしまったんだろう

なんで

なんで

なんで俺はみんなの優しさに気づかなかったんだろう

優しさを、裏切ってしまったんだろう。

出来ることな・・・

けど

どれだけ生きたいと、生き返りたいと、願ってももう返れない。

俺は死んでしまった。

ここは、この地獄は死んだことを後悔させる地獄なんだ。




いつまで歩けば終わるんだろうか。

いつまで歩けばこの悔しと後悔をぬぐえるんだろうか。

その先に、何があるんだろうか。

果てしない、

果てしない、

道が続いてゆく。

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