2015-06-26

猫を捕まえる

震災前の話、神戸で猫を捕まえるバイトをしていた。

1匹3,000円。

平日の真っ昼間。東遊園地で酒を飲んでいたボクに

港湾労働者風のおっちゃんが声をかけてきた。

「ボク、猫は好きか?」

なんでも、とにかく猫をつかまえたらお金をくれるらしい。

バイトをしていなかったボクは興味を持った。


ちょっとやってみたが猫を捕まえるのは思っていたよりも難しい。

そして公園にいる野良猫を狙うのは効率が悪いことに気がついた。


そこでボクは少し考えて、商店街ではなく住宅地に罠を仕掛けることにした。

当時は飼い猫も家の外にも自由にやっている家が多く、

野良よりも飼い猫の方が警戒心が薄いとあたりをつけた。

このヨミがあたった。

コーナンホームセンター)で害獣駆除用の捕獲罠を買ってきて、

日が暮れてから宅地児童公園に罠をこっそり隠すように置いた。

(ひと目にはつかず、猫目にはついてくれよ)

いつも祈っていた。

早朝に回収に行くと面白いように猫がかかっていた。



はいろいろ試したけど、固形キャットフードは缶詰よりも

魚肉ソーセージの方が効果があった。

ボクはすっかり猫を捕まえることが楽しくなってきた。

毎日猫を捕まえに行くようになった。

そしてしばらくすると周囲から猫がいなくなった。



あれから20年。

震災があり、おっちゃんとも連絡がつかなくなった。

そして、街の復興とともに神戸には猫が戻ってきた。

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