2015-04-20

かつて父親を殺された少年は、

その下手人死刑判決を下した裁判官に憧れ、

自らも立派な裁判官になろうと決意した。

しかし。

司法試験の壁は高く、そして分厚かった。

何十年にも渡る苦学の日々。

やむを得ず就職するも過酷労働ますますから気力を奪っていく。

少年青年となり、大人となり、そして老境に差し掛かっていた。

いま、彼は何者でもない。

名を持たぬ一人の増田である

幼い頃に抱いた鮮やかな決意は、

いまや腐りきった憎悪へと転化し、

それが裁判所へと向けられていた。

彼は濁った目でディスプレイを睨む。

私を認めない法曹界は間違っている。

あの美しかった司法を取り戻さねばならない。

公平で高潔だった司法を取り戻さねばならない。

……彼は増田に書き続ける。

幼き日の決意を嘘にしないために。

今日自分を嘘にするために。

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