私は納豆にキムチを入れるのが好きだ。だから、タレもカラシも使わない。
捨てるのはもったいないから、なんとなく取っておく事にした。タレなら煮物とかに使えるんじゃないかくらいの気持ちで。ショップの紙袋にぽんぽん入れていた。
やがて、納豆キムチのマイブームが去り、納豆も余り食べなくなった。紙袋の存在も忘れていった。
ある日、職場に出勤すると、職場のおばちゃんが「聞いてよ〜」と言ってきた。
職場に、大量の納豆のタレとカラシが入った紙袋があり、中で何か腐っていたのだという。納豆じゃないの、とおばちゃんが笑っていた。
私は混乱した。おばちゃんは私の表情をみて、微妙に疑惑の目になったのを悟り、「意味わかんないですね」と笑いながら答え、トイレに行くふりをして席を立った。
私が納豆のタレを職場に持っていく可能性について考えてみた。料理を振る舞おうと思って?みんなにおすそ分け?お弁当の調味料に?捨てようと思った?何かの紙袋と間違えた?いや、どれもありえない。恥ずかしいから見られたくない、まず。捨てる気はなかった。紙袋は強度がないから、荷物を入れて運んだりしない。かといって、私以外の誰がするだろう。紙袋、タレとカラシの混在、この条件を満たす現象は滅多にないように思われた。
もう捨ててしまったらしいので、確認することはできない。じゃあ、私の家で見つかれば良いのだ。と思って探したが、見つからないのである。