何もなさそうに見える人でも、きっとこれを読んでいるあなたにも、喜怒哀楽にまつわる何かを抱えている。
そんな中で、朝起き、飯を食い、排泄し、移動し、労働し、消費し、翌日に備えて寝る、のサイクルを日々こなす。
それは綱渡りに似て、ちょっとした一押しで転落する可能性を秘めた、バランスをとる作業。
右に体重がかかりすぎれば、左に寄り、左に重心を置き過ぎたなら、右に寄り。
コツをつかんだ者はバランスに強く、スピードのある者も意外と転落しにくい。
バランスをとるために人には言えない工夫をするが、そんな自分が虚しくなる夜もある。
だから少し思いを吐き出してみた。
反応は思ったより多かった。
「お前が選んだ道」「自分に酔っている」「お前に欠陥はないの?」
うるせえ、と口に出して、今日も朝起き、飯を食い、排泄し、移動し、労働し、消費し、翌日に備える。
野次は全部同じに見えた。穿った意見も全部同じに見えた。まるで幽霊のエキストラのようだ。
でもその中で、たった一人味方してくれる人がいた。
重心が戻った。
そして今夜も、一人分多くの夕食を作る。