歩いていく。
あるいは、辿り着いた、と言うよりは、ただ途上にあるだけかもしれないけれど。
たくさんの樹木の姿が覗えた。
僕達はその間の道を歩いていく。
いつの間にか、僕は自らの姿形が変わっていることに気付く。
彼女はそのことに気付いていたようだけれど、別段特に気にする素振りは見せなかった。
僕としても、そんな態度を取られることに対して特に不満は無い。
ただただ歩き続ける。
木漏れ日の落ちる、森の中を歩いていく。
木と木の間隔はやや広く、落ち葉は目につかない。
ただ、静脈のような根がびっしりと地面を埋めていて、時々足元に気を付けなければならなかった。
恐らく、この先には不幸が待っているだろう、と僕には思われた。
だから、その結末をどうにかして変えなければならない、とも思われた。
でも、歩いていく内に思いつくさ、と僕は考えを改める。
今はとにかく、彼女の後ろについて歩いていくだけだ。
やがて、広場が見えてくることになる。
ぽっかりと木々の姿の無くなった、円形の広場だ。隅っこの方に、切り株が象徴的な存在として放置されている、そういう広場だ。
僕はすでにその広場のことを知っていた。
見覚えのある広場だった。
いや、見覚えのある、というどころの存在ではない。
そんな僕をよそに、彼女は、ようやく辿り着いた新しい場所に、無心で喜んでいる。
でも、僕は知っていた。
そこからは、青い海が見える。
上手く行けば、断崖脇の道を使って、砂浜へと降りられるだろう。
おぼろげながら、その脇道の場所についても僕は知っていた。
けれど、僕達は海を渡れない。
だから、ここは僕達にとって終わりの地なのかもしれない、と僕はそう思った。