2014-08-26

幻想後記

 歩いていく。

 いつの間にか僕達は違う場所に辿り着いている。

 あるいは、辿り着いた、と言うよりは、ただ途上にあるだけかもしれないけれど。

 たくさんの樹木の姿が覗えた。

 僕達はその間の道を歩いていく。

 いつの間にか、僕は自らの姿形が変わっていることに気付く。

 僕の身長彼女よりもやや高かった。

 歩幅も、もう彼女のものを上回っていた。

 彼女はそのことに気付いていたようだけれど、別段特に気にする素振りは見せなかった。

 僕としても、そんな態度を取られることに対して特に不満は無い。

 ただただ歩き続ける。

 木漏れ日の落ちる、森の中を歩いていく。

 木と木の間隔はやや広く、落ち葉は目につかない。

 ただ、静脈のような根がびっしりと地面を埋めていて、時々足元に気を付けなければならなかった。


 恐らく、この先には不幸が待っているだろう、と僕には思われた。

 だから、その結末をどうにかして変えなければならない、とも思われた。

 その方法に関しては分からない。

 でも、歩いていく内に思いつくさ、と僕は考えを改める。

 今はとにかく、彼女の後ろについて歩いていくだけだ。


 やがて、広場が見えてくることになる。

 ぽっかりと木々の姿の無くなった、円形の広場だ。隅っこの方に、切り株象徴的な存在として放置されている、そういう広場だ。


 僕はすでにその広場のことを知っていた。

 見覚えのある広場だった。

 いや、見覚えのある、というどころの存在ではない。

 デジャブというにはあまりにも強い感情の揺れが、僕を襲った。


 そんな僕をよそに、彼女は、ようやく辿り着いた新しい場所に、無心で喜んでいる。

 でも、僕は知っていた。

 この広場を抜けて少し進んだところには、断崖が存在している。

 そこからは、青い海が見える。

 上手く行けば、断崖脇の道を使って、砂浜へと降りられるだろう。

 おぼろげながら、その脇道の場所についても僕は知っていた。

 けれど、僕達は海を渡れない。

 だから、ここは僕達にとって終わりの地なのかもしれない、と僕はそう思った。

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