私は酔っ払いが嫌いだ。
酔っぱらって、大声を出して、騒いで、道端で寝て、ゲロをはき、くだをまく。
見ていて、本当に情けなくなる。恥ずかしくなる。
一番腹が立つのは、酔っ払いが「酔っぱらっているから仕方ない」オーラを出していることだ。
酔っぱらってるからって、何してもいいと思ってんのか。思ってんだろな。だから凝りもせず酔っぱらって醜態晒すんだろな。
私がこんなに酔っ払いを憎んでいる理由は、父にある。
私の父は、酒ばっか飲んでいた。
家族に注意されるとまたあてつけのように飲み、
少し治まったかな、と思えば隠れて飲んでいた。
年が経つにつれ、暴れたり、怒りっぽくなったり、といういやな傾向も増えた。
料理酒まで飲んでいたのを発見した時は、情けなくて、何も言えなかった。
私は酔っぱらった父が嫌いだった。
しつこくて、目がうつろで、ろれつが回らず、急にしんみりとした話をし出すのも、
気持ちが悪くて気持ちが悪くて仕方がなかった。
わたしは酒を憎んだ。
なんで酒が、この世にあるんだろう、何のためにあるんだろう。
なんでこんなふうに、人を、してしまうんだろう。
それで、なんで父はこの液体に、憑りつかれているんだろう。
今考えれば、父はアルコール中毒だったんだろう。
飲まずにはいられない、そんな感じだった。
そんな父は、今年死んだ。
私は、悲しかったけれど、心底ほっとした。
もう、酔っ払いの父を見なくて済む。そう思った。
これで、もう父の酒に振り回されなくて済む。
それでも、私の周りには酒を飲みたがる連中がまだたくさんいて、
私はそいつらの酒飲みたい欲求に付き合って、車の運転をしたり、後片付けをしなければならない。
酒飲みに振り回される人生…
本当に、疲れたなあ。