いつもよく行くモスバーガーの注文で、指先で指しながらメニュー表の番号を読み上げていったらその度にカウンターの娘さんが身を乗り出して確認するので居たたまれない気持ちになった。最後の注文は名前でお願いした。
滑舌と頭の悪さで、注文を訂正したり何回も言い直すのが嫌なので、煙草と同じように自然と習慣に従っただけなのだが、新しいバイトさんには通用しなかったらしい。
「彩り野菜のきんぴら」ライスバーガーの『彩り』って「いろどり」と「あやどり」のどっちだとおっさんが十秒ぐらい固まることを考えれば、ましだというのは心に秘めたこちらの都合。
注文を入れるたびにカウンターの上辺りから高々とマイク音声で厨房に復唱しているので、メニュー確認は仕方ないことなのだろう。微妙にこの時の雑音混じりの音声が不快なのだが、それもこちらの都合。
車の喧噪をぼんやり眺めて受け取る時に、わざわざドアまで送ってくれた時、彼女が差し出した袋に掛かっていた指に、挟まれた白い注文票をレシートだと思って取ろうとして無言の指相撲を展開してしまって、ばつが悪い思いをしながら外に出た。