2024-02-06

あいつの名はモミジイチゴ

身近な植物名前を知りたいなとずっと思っていた

小説を読むのは昔から好きだったけど、たまに文中に出てくる木や植物の名を読んでも、私の中にははっきりとした像は浮かばない

植物名前から連想するぼんやりとした印象だけで読み進めて、本当に作者が伝えたかった世界を読み取れないことが少し悔しかった

このたび、『樹皮・葉でわかる樹木図鑑』を買った

手近なところから木の特徴と照らし合わせて、すこしずつ名前がわかるようになったらと思ってのことだ

ページをパラパラとめくっているとモミジイチゴという植物を見つけた

モミジのような葉っぱに、茎に棘があり、2mくらいに育つ木

小学生の頃、家の近くの国道の側に生えていた木だ

果実黄色くて、甘く、弟や友達とよくとって食べていた

国道の下を通る用水路の側の誰の土地でもなさそうなところに生えていた変な木だった

枝の棘をよけながら、用水路からとれる実を食べつくしたら、国道側に回り込みガードレールに足をかけて、高い枝に手を伸ばして棘に刺さらぬよう気をつけながら甘い実を食べていた

私はてっきり黄色いかキイチゴだと思っていたら、木になるからキイチゴなんだよと友達に言われ、でもうちの側にある木の実は黄色いよと言うと、そんなのキイチゴじゃないよ、毒あるよと言われた

つの間にかあの木は枯れてしまった

私が住んでいる地域ベッドタウン的な平野部で他にあの木を見たことはなく、思い返すこともないのですっかり存在を忘れていた

図鑑によると、あいつの名はモミジイチゴというらしい

日本キイチゴの中では一番うまいと言われていて、育ててもなかなか実をつけないらしい

そんな木がなぜ車がばんばん通る国道の側に生えていたのだろう

私は亡くなった爺さんが山から木を盗んできて、勝手用水路の側に植えたのではないかと怪しんでいる

そもそも「あの実は美味いからとって食え」と僕らを初めにけしかけたのも爺さんだったからだ

今の家に生えている、さくらんぼザクロ山椒かりんも爺さんが植えたもの

から私は昔からさくらんぼざくろ山椒かりんの木はわかる

あいつの名はモミジイチゴというのかという知識を飲み込みつつ、小さな毛の生えた黄色い実をがどんな味だったか思い出せないでいる

  • 写真を取ったら植物の種名を教えてくれるスマホアプリが便利だよ。俺は iPhone / iPad で PictureThis というアプリを使ってる。

  • なんとなくいい話だ。

  • 「小さな毛の生えた黄色い実」ってなんかキ◯タマの詩的表現みたいで素敵だなって思いました。

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