2021-01-11

「まだ声優ラジオなんて聞いてんのかい?」

そう言われて、僕は慌ててアイフォーンを弄って音量を下げ、耳からブルートゥースのイヤフォーンを外した。

「五月蝿かったですか?」

そう言いながら僕は同業者の方に振り返る。

名札を見て、声の主が「田中」さんだったことを思い出した。

「いや、そうでもない。たださっき画面がチラッと見えてね」

(そんなことなら放っておいて欲しいなあ)

そう考えながらも、「田中」さんがこの現場における僕の同期であることを思い出すに連れて彼の気持ちもなんとなく把握しつつあった。

田中さん、今日のお昼もカレーですか」

免疫をつけないとね。また、この近所にもコロナが出たろ?」

(それならご飯中に話しかけないで欲しいなあ)

しかし、君が声優ラジオなんて聞くとはね」

面白いですよ。なんのかんの言って放送作家仕事が安定してますんで」

「割り切った言い方だね。それじゃあVのモノも同じように捉えてるのかな」

コイツ同族として認定したな)

「そうですね。でも、あっちは玉石混交に感じます

「俺なんてランキングの高いのしか見てないからそういう風には感じないな」

「確かに今はそうかも知れませんね」

「なら声優ラジオなんか聞いてないで聞くのもVでよくないかい?」

ラジオは音だけで完結してるから職場でならラジオに限りますよ」

「僕なんてゲームやりながら聞くから画面はあんま見てないけどな」

「でも、たまに画面見てる前提で進むじゃないですか。気になるんですよね」

完璧主義だね」

「そうなんでしょうね」

「でも、声優ラジオじゃあ話題にはついてけないだろ?」

「こっちにはこっちの話題がありますよ」

こっちが二重にかかってしまたことが向こうに伝わったのか、田中さんは少し黙ってしまった。

仕方ないので食事に集中した所で彼が口を開いた。

「ところで誰のが好きなんだい?」

増田増子の匿名ダイアリー

「その人、ハテナ・テオノの中の人だっけ?」

「あっちは、放送作家が違うっぽいんで」

「そこ、やっぱ大事なのね」

大事ですよ」

「君にとっての魂はそこか」

「魂とは違いますね。聖霊です」

「神ではないのか」

安直表現から嫌いなんですよ。神」

「なるほどね」

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