9月30日付朝日新聞に山本庸幸・元内閣法制局長官のインタビュー記事が掲載された。2013年8月、山本氏が長官を務める内閣法制局は、憲法9条の下で集団的自衛権の行使は認められないとの見解を墨守していた。なんとしても集団的自衛権合憲論に転換しようと画策していた安倍首相にとって、内閣法制局は目の上のこぶであった。そこで仕組まれたのが山本氏を更迭し、先例を無視した集団的自衛権容認論に立つ外務官僚を後任に据えるという異例の人事であった。
杉田和博の名前と長年の人事慣行を破った点は、学術会議問題と共通している。
――2013年8月8日、内閣法制局長官だった山本さんが辞任し、駐仏大使の小松一郎氏を後任に充てる人事が閣議決定されました。この人事を最初に聞いたのはいつ、どのような状況でしたか。
「6月ごろでしたか、事務担当の官房副長官の杉田和博さんから閣議後に『7月21日の参院選の後に君には辞めてもらうから』と直接言われました。『ああ、そうですか』と答えてから、気になって『後任は次長ですね』と念のために聞くと『小松一郎だ』と言うので、非常に驚きました」
――法制局経験がなく、外務省出身の小松氏が就任すれば、法務、財務、経済産業、総務の4省出身者が交代で、次長から昇格する長年の人事慣行が破られるからですね。どう受け止めましたか。
「安倍晋三首相の集団的自衛権行使への思いがそれだけ強いのか、と改めて感じました」