今年9月の大型台風。地震やら集中豪雨やらの災害が多発して、今となっては記憶から抜け落ちている人も多いだろう。
大阪に住んでいた俺は、この台風のせいで一週間の停電・断水生活を余儀なくされた。6月の地震の時はここまでの被害は無かったのに。
それはさておき、じわじわと怒りが湧き上がるエピソードがある。それは、警察官が家に押し掛けてきたことだ。
停電と断水状態が続いて残暑にうんざりしていた頃。突然家のドアをノックする音が聞こえた。当然ながらインターホンは鳴らない。
ドア越しに姿を確認すると、そこに立っていたのは警察官。ひょっとすると復旧作業についての告知かもしれない。もしくは、当時まだ記憶に新しかった留置場からの脱走犯に関連した注意喚起か。
俺はドアを開けた。
警察官が取り出したのは一枚の紙。
「大阪万博の関係で、近隣住民の構成について確認をしているので協力して下さい」
そう告げられて渡された用紙には、氏名や電話番号、実家の住所等を書き込む欄が設けられていた。
取りあえず用紙を受け取り、最初は何の気なしに自分の名前と現住所を書き込む。だが、じわじわと疑念が浮かび上がってきた。
なぜ台風の被害で大変な時期に、(当時はまだ確定すらしていなかった)大阪万博関連の防犯(?)対策に協力しなくてはならないのか。生活の混乱に便乗してこんなことに協力を求めるのは卑怯ではないのか。そもそも何の権限があって住民構成の把握ができるのか。
実家の両親の名前と住所を記入する欄に差し掛かった頃、運良く便意が襲ってきた。水道が止まっているこのアパートではトイレは使えない。少し歩いた先にあるコンビニのトイレが唯一の救いだった。
俺は玄関で待機していた警察官に、途中で記入を放棄した用紙を押し付けた。
「途中までしか記入されていませんが……」
「トイレに行きたくなったので。ここ断水してて使えないんですよ」
今までの人生の中で警察官に対して嫌悪感は抱いたことは無かったが、あの日以来信用は地に落ちた。つい最近、自転車の防犯登録の確認をされた時も拒否してやろうかと思ったほどに。さすがにその時は素直に協力したが。
警察を信用するやつはバカだけ
タイトルだけ見ると星新一ぽい