つい最近、日経にそのような記事があったが意味がよく分からない。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC1501W_V10C13A8EE8000/
日銀の異次元緩和効果の銀行融資への波及がまだ見えない。国内銀行の預金に対する貸出金の比率(預貸率)は6月に70.4%と四半期ベースで過去最低を更新した。
預貸率を見ると、預金に集まったお金ほど貸し出しは伸びていない。足元で預金は年4%ペースで増えている。一方、銀行の貸し出しの伸びは3%程度にとどまる。
預貸率は銀行が預金として預かったお金を、貸出に使うか国債購入に使うかの選択において、
どの程度だけ貸出の方を好んでいるかを表しているのであって、銀行融資に金融緩和が波及
しているかは貸出の推移そのものを見ないと分からないのではないか。
たとえば、期待インフレ率0%の時、国債金利が1%、貸出金利がプレミアムが乗って3%だったとする。
ここで金融緩和によって期待インフレ率が2%に引き上げられても、国債も貸出もどちらの実質金利も
下がってしまうので銀行にとって貸出への選好度合いはあまり変化しなくて当然なのではないだろうか?
もしそうなら、預貸率は金融緩和によって特に影響をうけることはないので、預貸率を見てもその
波及具合は判断できないはずである。
一方で、企業の追加的な実物投資の利回りが償却も考えれば0%の時、期待インフレ率が0%なら国債に
投資すれば1%の収益があるので設備投資をせずに手元の現金は国債に回す(中小企業だと預金に回す)
ことになるが、期待インフレ率が2%に上がれば国債の実質金利は-1%となり実物投資の方が有利になる
ので国債に回していた分が実物投資に回り、設備投資が増えることになる。この時、手元の現金が
預金から設備投資に回るため銀行の貸出は増えない。また、設備投資をする企業の預金は使われて
減少するが、その設備投資の注文を受けた企業に支払われたお金は注文を受けた企業の口座に預金として
現れるので、銀行業界全体の預金も変化しない。結局、金融緩和で期待インフレ率が上がり、設備投資に
波及していても、貸出も預金も変わらないので預貸率では捉えることが出来ないはずである。
さらに金融緩和が進んで期待インフレ率が4%になった場合(あるいは、設備投資が増えたことで総需要が
刺激され、企業の実物投資の利回りが1%を上回るまで上昇した場合)、企業の実質的な借入金利が
実物投資の利回りを下回るので、融資を受けて設備投資を行うようになる。この段階になると、銀行の貸出は
増える。そして、その貸出は企業の口座に預金という形で振り込まれるので預金も増える。その増えた預金は
上の場合と同じく、企業によって使われても銀行業界全体としては減ることはない。この時、預貸率は
上昇する可能性が高く存在するものの、貸出だけでなく預金も増えるため、預貸率の数字の変化は微々たるもの
になり、他の影響にまぎれたりして、すぐに簡単に金融緩和の波及の影響を捉えることは困難であろう。
結局、金融緩和の影響は、銀行融資への影響に限っても預貸率から読み取ることは困難であるはずなのに、
なぜ預貸率がそれを表すものとして扱われているのか理解出来ない。