2009-06-04

無届け有料老人ホーム

老人ホームは、現在の法制度の中では、老人福祉法第29条に規定されている。介護保険制度が成立した2000年以後、介護ビジネスに参入するには、介護を受ける老人を確保しなければならないという事で、設備投資として、老人ホームを作る事がブームになった。不動産業界と金融機関では、老人ホームバブルとすら、影で言われていたぐらいの好況が発生していたのである。

このビジネスの要諦は、要介護認定において、症状の軽い人を重症者として登録する事で、介護する手間をかけずに、満額の介護報酬を引き出すという点にある。入所者の支払ったお金は、家賃光熱費、共益費、食費といった実費分で費消してしまうが、介護報酬分が利益となるのである。これは、詐欺行為である。介護支援専門員(Care Manager)にしてみれば、ケアプランを作って手数料を貰う以上、老人を管理しているホームの側の要求に従わないと、仕事が取れない。老人にしても、ホームに入った以上、ホームの指示に従わないと追い出される。行政が調査に来る時の為に、ボケや徘徊や失禁の症状を装う練習すらあったと聞く。

この詐欺行為がなぜバレたかというと、本当にボケたり徘徊したり失禁したりするような老人が出てきた為である。老人ホームは、元気な老人を重症者として偽装する事で利益を上げているわけで、本当に重症者になってしまったり重症者が入所してきたりしたら、困るのである。そういう患者を追い出したり、他の施設に飛ばしたりしてごまかしていたのが、ついに入所者達にバレ、行政に密告が入ったのである。

2006年以後は、介護保険の支払い総額を抑制する為に、都道府県によって、新設数が規制されている。

介護保険を作った事が根本的な間違いなのだが、行政のやる事に間違いは無く、問題は運用にあったという事で、不埒な業者が悪いという事になり、不埒な業者が老人ホームを開設しないように、厳しい規制を課している。ここに、無届け有料老人ホームが発生する原因がある。

老人人口は増加しているし、介護家族関係破壊し、老人の面倒を見ていたら生活が成り立たなくなるという共稼ぎ核家族家庭も増えている。老人ホーム需要はあるのだが、新設が許可されないということで、無届老人ホームが発生するのである。

老人ホームは、老人福祉法によって規制されている。しかし、各都道府県の育英基金等が運営する学生県人寮(cf.1,2)のように、若者ばかりが寄宿する施設も、世の中には存在する。

老人ばかりでは、実質的老人ホームとなり、老人福祉法の届け出をしなければならないが、たとえば、年齢条件を課さず、結果的に老人ばかりとなっていれば、それは、老人ホームでは無く、単なる雑居寄宿施設となる。

行政としては、設立許可を出した老人ホーム介護保険詐欺を働いたら責任問題になるという事で、基本的に、官職退職者やその関連といった、人物的に問題の無い人や、不祥事があっても出身省庁が全力をあげて揉み消してくれる人にしか事前許可を出せない。無届老人ホーム勝手開業した後に、老人ホームとしての実体がある事が介護保険の請求から判明したので、届出を出させたという形であれば、将来詐欺行為が発覚しても、責任問題にならないのである。開業してしまえばなし崩しにできると言えなくも無いのであるが、まともな人は、認可老人ホームである事を入所の条件にする為に、無届老人ホームには、まともではない患者ばかりが集まる。そこで、ビジネスとしては死に筋という話になっているのであった。

官職退職者が、同じような退職者や現役官職者の老親を受け入れる為の老人ホームを設立し、そこで行われる介護行為にかかる費用を賄う為に、非公務員はおとなしく介護保険料を支払え、非公務員やその老親は、ボケようが徘徊しようが、介護保険対象にはならないし、たとえなったとしても自宅で面倒を見ろ。あと、公務員関係者以外に介護認定を上げてきた介護支援専門員は、五年毎の資格更新試験の時に覚悟しろよ。という話なのである。

介護保険という善意あふれる思い付きが、結果的に、老人ホームが必要な人に供給されないという現象を発生させ、大衆を苦しめるという典型的な展開になっているのであった。

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