2024-11-17

泣きっ面にハチ

犬のハチがいなくなった。

ふと目を離した隙に姿が見えなくなってしまった。

リードが外れてしまったのか、どこかへ走って行ったのか、とにかく姿が見えない。

ハチハチ!」

慌てて名前を呼びながら近所を探し回ったが、どこにもいない。

普段ちょっと呼べばすぐに戻ってくるハチなのに、今日はどれだけ呼んでも反応がない。

頭の中で嫌な想像ばかりが膨らむ。車にひかれたんじゃないか迷子になったんじゃないか……。

夕方になっても見つからず、日が沈むとあたりはすっかり暗くなった。

心細さと不安がどっと押し寄せてきて、家に帰ると自然と涙があふれた。

ハチ、どこ行っちゃったの……」

声を出して泣くなんていつぶりだろう。悔しいやら寂しいやらで、気持ちはぐちゃぐちゃだ。

膝を抱えてしゃがみ込み、わんわんと声を上げて泣いていると、ふと、頬に何か湿ったものが触れた。

「え?」

びっくりして顔を上げると、そこには――ハチがいた!

ハチ!」

わず声を上げて抱きついた。ハチはいものように尻尾ぶんぶん振って、まるで「ただいま!」と言うように私の顔をペロペロと舐めてきた。

「どこ行ってたのよ!心配したんだから!」

怒るどころか、嬉しさで涙が止まらない。ずっと胸に溜まっていた悲しみが嘘みたいに消えていって、ただただ幸せ気持ちに包まれた。

こういった由来から「泣きっ面にハチ」とは、悲しい時に訪れる幸福意味することわざになったのである

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