2024-10-12

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。

夜の底が白くなった。信号所汽車が止まった

向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラスを落とした。雪の冷気が流れ込んだ。

娘は窓いっぱいに身を乗り出して、遠くへ叫ぶように、

「お母さあああん

明かりを下げてゆっくり雪を踏んで来た男は、

襟巻で鼻の上まで包み、耳に帽子の毛皮を垂れていた。

うそんな寒さかと島村は外を眺めると、鉄道

官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばっているだけで、雪の色はそこまで行かぬうちに闇に呑まれていた。

食べ物ってどこで調達するの?」

荷物はどうほどけばいいの?」

美緒生きていけないよおおおお」

駅長さん、私です、ご機嫌よろしゅうございます

__美緒48歳

_____配偶者 なし 子供 なし 生活能力 なし

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