苦しくて苦しかった頃の大学の卒論を大事に暖めながら
自分は良くやった、良くやったんだよと
リタイアメントが過る頭で、2本の腕で自分を抱き締める。
中身のない空っぽな薄っぺらい論文を抱き締めて
既に崩れ落ちた心の破片を踏み締めて
何が刺さってるんだろう、誰がこんなもの放置してるんだろうと足裏を覗き込むと
キラキラと破片に過去が写り込んで、非常に眩しく血が流れているにも関わらずそのまま、抜けない。
誰も己の過去になど興味は持たないから
自分が抱えるしか無いのだと諦めながら
両の手は論文を抱えるので手一杯になっていて
両足はいつの間にか血だまりに沈んでいる。
向う岸には弟がニコニコと笑っていて半分苦しんでいて
清濁併せ呑んだ顔でこっちを睥睨している。
誤りだらけの兄弟の、親にさえ拒まれたこの醜い身体を
あいつはさも面倒そうに見てみぬ振りをしながら
お前は汚点だと言い聞かされる。
妙齢になっても子孫を残さず
ただ遊び呆けているような
寿命を切り崩して後悔に後悔を重ねているように見えるのだろう
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