大学へは電車通学。田舎から都会に出る所要時間は片道2時間。一限がある日は6時台の電車にのるため5時に起き、帰りは田舎の路線のため本数が減って待ち時間込み20時でようやく最寄り駅に着くことはザラにあった。
長い時間、スマホをいじるのにも飽きるようになり、読書をはじめた。頭はそれほど良くないので知識は右から左へと流れていったが、本の内容は面白かったという思い出は残ってる。あれはあれで贅沢な時間だった。ただ電車で読書をするためにブックカバーをじっくり雑貨屋さんで探すのもあの時しかできない贅沢。
ある日の帰り。とっぷり夜も更け、二人がけの席の奥側を専有し壁に持たれ付きながら電車に揺られていた。乗り換えで一次目がシャキっとしたのも束の間、すぐ睡魔が忍び寄ってきてうとうとおしているお、中途停車した駅から男性が乗り込んできた。目も瞑って俯く中、隣に座ってきたことを気配で分かった。
そうして、何故か脚を密着してきた。ぴったりと。
この電車は田舎の路線。19時台となれば乗車数は減る。どうして席ががら空きの中、隣に座ってきたのか。なるほど、こんなこともあるのかと半分覚めない頭で思った。二駅ほどで降りる。寝たフリをしておこう。
ようやく最寄り駅へ到着。すみません、と小声で喋りながら外に出た。駅でボーッと顔としてはFXを溶かした時のような顔で少し突っ立った。なぜ足?
翌日、友達に笑い話として喋ったらめっちゃウケた。足くっつけられたけど、冬暖房に最適と言ったら大ウケした。
その最寄り駅のすぐ近くには会社がある。今はそこで働いてる。それだけ。休日数とお賃金が良ければどうってことないのだ。決めつけは良くないしな。