『君の名は。』はそもそも二人の人間の中身が入れ替わり、しかも時間すら超えてそれが発生するファンタジーだった。
今の日本と限りなくそっくりな場所で行われているファンタジーの感覚で、だから彗星が落ちても平気だった。
しかし『すずめの戸締まり』は、完全に「今ここ」の話である。だからしんどい。
被害規模で言えば、『天気の子』もなかなかすごいことになっているが、やはりファンタジーだった。今から晴れんだろ。
だから東京が水没しようと、今ここにある東京とは別の、限りなく似た別の場所という感覚だった。
『すずめの戸締まり』にもファンタジー要素はある。いきなり猫が喋るし。
しかし、ヤツは神だ。古事記や日本書紀のファンタジー感に近く、今ここと地続きな感じがする。
『すずめの戸締まり』でじんと来たすべては、震災の風景や記憶によるもので、震災ドキュメンタリーから得られるものと同じだった。