高速バスの乗客は2人だけだ。
珍しく晴れた空には、遠くに入道雲のなり損ないのような雲が見える。
換気のために少しだけ開いた窓からは、すれ違う車のエンジン音と方方で鳴く蝉の声。
バスのエンジン音・窓ガラスが小刻みに揺れる震動音・アイドリングで途切れない通底和音・カーブの度に鳴るビープ音が、不安定なノイズミュージックとして環境を支配する。
窓際の空気は、バス内の空調と外から吹き抜ける熱さがごちゃ混ぜになり、座席に取り付けられたプラスチックの衝立を小刻みに揺らす。プラスチックは日光を反射し、不恰好な光の波を描く。
俺のお腹は限界が近い。
漏らすか、漏らされるか。
辺りに気を配り、テキストに全神経を集中させる。
もっとスピードを!
終着のバス停まで、後もう少しだ。
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