2021-12-11

理不尽

の子大人になれなかった。

の子はとても優しい人で、私のようなクラスの隅っこにいる人間にも優しかった。

頭も良くて、明るい人だった。それでいて驕らない、出来た人間だった。

たぶん、将来は社会第一線で活躍していくような人になったと思う。

だけど、そんなあの子大人になれなかった。

殺された。二十歳を迎える前に。理不尽に。

私は、まったくもって素晴らしい人間ではなくて、頭も悪いし性格も悪いし、どうにかこうにか生きてるような人間だった。すぐサボるし、皆ができることが出来ないし、それでいて無駄プライドが高くて、諦めだけは悪いような、ダメ人間だ。

時には死にたいとか、死ぬのはこわいか世界が滅亡してしまえば良いとか考えるような、不出来な人間だった。

だけど私は生き残って、大人になった。

不出来ながらどうにか就職して、どうにか生きている。

どうしてあの子は死んで、私は生きているんだろう。訳が分からないし、今でも分かってない。たぶんこれからも分からない。ずっと分からない。

今でも、たまにあの子笑顔を思い出す。

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