あの子はとても優しい人で、私のようなクラスの隅っこにいる人間にも優しかった。
頭も良くて、明るい人だった。それでいて驕らない、出来た人間だった。
たぶん、将来は社会の第一線で活躍していくような人になったと思う。
殺された。二十歳を迎える前に。理不尽に。
私は、まったくもって素晴らしい人間ではなくて、頭も悪いし性格も悪いし、どうにかこうにか生きてるような人間だった。すぐサボるし、皆ができることが出来ないし、それでいて無駄にプライドが高くて、諦めだけは悪いような、ダメな人間だ。
時には死にたいとか、死ぬのはこわいから世界が滅亡してしまえば良いとか考えるような、不出来な人間だった。
だけど私は生き残って、大人になった。
不出来ながらどうにか就職して、どうにか生きている。
どうしてあの子は死んで、私は生きているんだろう。訳が分からないし、今でも分かってない。たぶんこれからも分からない。ずっと分からない。