わたくしとんかつを揚げておりましたの
ちょうどいい具合にとんかつが揚がったと思ったところで異変が起こりましたの
とんかつが金色に輝き、その光が視界いっぱいに広がったんですの
わたくしそのまばゆい光に目がくらみながらもコンロの火だけはきっちり消しましたわ
しばらくすると光は収まったのですけどわたくしは困惑してしまいましたわ
わたくしの愛しのとんかつ
キッチンのどこを探しても見つかりませんでしたわ
わたくしはあまりに悲しくてその日は自室に閉じこもって過ごしましたわ
その日の夜わたくしは夢を見ましたの
とても不思議な夢でしたのよ
なにもない真っ白な空間に一人の女の人がいたんですわ
顔はよく思い出せませんわ
優しい雰囲気のある方でしたの
その方は女神だと名乗りましたわ
女神様がどのようなご用件ですの?
わたくしはそう問いましたの
女神様はこのようなことを言いましたの
もちろんわたくしには意味がわかりませんわ
女神様は微笑んでこう続けたのですわ
口の中が大やけどして転げ回っているところを
勇者が討伐したのです
わたくしが呆れて
なんでもありですのね
と言うと
なんでもありなんです
と女神様は得意げに頷きましたの
それならわたくしのとんかつでなくても
女神様は驚いたように
そう言って夢は終わってしまいましたわ
結局わたくしのとんかつは戻ってきませんでしたの