ウォシュレットで一番いやらしいボタンがある。何も「おしり」などという押すのもためらわれる無遠慮なものを挙げる必要はない。私としては慎ましく乳房の先を思わせるフォルムの「止」ボタンを推したい。
我が家の「止」も多分にもれずいやらしく、私などは生来、用を足すたび用はなくともいやらしく「止」を弄くり回したものである。
その甲斐あってか近頃など「止」の端に触れただけでその切っ先は敏感に反応し、思ったより早めにウォシュレットが止まったりする。ははぁこいつこなれてきたなと用もなく便器に座り、「おしり」を押す。そして「止」を撫で回す。
しかして敏感にウォシュレットは止まる。ということもない。虚を突かれた思いだ。少し失望し「止」を押す。強めに押す。止まらない。なんの事はない、「止」は使い過ぎで壊れていたのだ。
しかし、尻に水は当たり続ける。ぼう然と座りつくす。信号が赤なら人も車も等しく止まり、青なら進む。ウォシュレットが止まらない時はどうするのか、どこかで習った記憶はない。ああコンセントを抜けばいいのかと身体をひねる。的確に尻を狙っていた水鉄砲は便器の前の壁を濡らす。どうしろと言うのだ。理不尽を背負いながらトイレットペーパーで拭き、水を流す。
毎回止めるたびにウォシュレットの尻拭いをしなければならないのだろうか?