少女はじいっと世界史Bの教科書を見つめていた。今は昼下がりの時間だから、学校が早く終わったのだろう。電車に揺られながら、少女は教科書の向こうの、ガラスのように鮮やかな未来を見つめている。少女の瞳に、雲が流れて、青い芝生が輝き、ピカピカしたビル群が映し出される。そして少女は、はにかみがちな美男子と恋をするのだろう。私にもこんな頃があった。あの頃の集中力や好奇心を思うと、今のあさましい自分が惨めになる。私には、眩しすぎる。少女よ、あまりにも短い少女時代よ、永遠たれ。ただそこにいて、街路を濡らす雨露のように、喫茶店の軒先の花樹のように、世界をわずかでも輝かせてください。
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