30年以上住んだ場所を離れる転職を決めた。多くの人と「またね」「げんきでね」と一旦の別れの連続。母もその1人。でもうまくいかなかった。
親の愛を、子供はどこまで要求できるものなんだろう。親にも都合があり限界がある。
母は勤勉で忙しくしながら私を愛してくれた。でも私は満足できなかった。母の再婚相手に母を取られてしまったからだ。再婚相手についての描写は控えたい。自身の心に刻まれた傷や憎しみを見たくない。「あの家庭でグレなかったのを尊敬する」そのような場所で思春期を過ごした。「あの人は丸くなったよ」そう言いながら母は未だその人と共にし、最後の相手として受け入れている。
今日、母と帰りの車内で「あなたが暴れず静かに戦っていてくれたから保てた」そう言われた。
でも私には激しく事を荒げる術が分からなかった。荒げたところで何が変わる。今思えば諦め泣き寝入りしていただけのように思う。そしてこのような文を書くように、あの頃の私が消え去らずにずっと胸の奥底にいる。母を求め寂しくて泣いている、幼い私がずっと心にいる。