2018-07-31

気づいたら、純粋だった僕は唾くれおじさんと化していた話

小学生の頃、母ちゃんに唾くれおじさんが出没しているから気をつけるのよ、と言われたことがあった。

当時、純粋無垢権化だった僕は、「なんで小学生の唾なんてフィルムに集めたがるんだろう」と不思議しょうがなかった。


あれから、四半世紀の時が流れた。


社会という荒波に飲まれていくうちに、凶暴なもう1人の自我が芽生えていることに僕は気づいてしまった。

そう僕は、いつから小学生の唾液を集めたくて仕方がなくなっていたのだ。


一日のうちで、ヒトの心を持つ「僕」の時間と、唾くれおじさんになって意識のなくなる「おじさん」の時間がある。

どうやら唾くれおじさんとしての時間の「おじさん」は、乱暴なことをしているらしい。


最近では、「僕」の時間よりも、「おじさん」である時間が増えている。

意識を持つ「僕」は、それを振り返るたびにとても苦しい。


でも、無意識で過ごす「おじさん」はその苦しさがない。

からいつか、この「僕」が消えてしまえば、「おじさん」はしあわせなんだ。


もう時間がない。


そのうち、おじさんは牢屋にぶち込まれるだろう。

きっとフィルムだって証拠品として押収されるに違いない。


誰か、おじさんが集めた数千のフィルムケースを受け継いではくれないだろうか。

後世に伝えないでは、死んでも死にきれないんだ。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん