2019年、平成と呼ばれる時代が終わり安始の時代が幕を開けた。
「安らかな時代の始まり」と謳われた安始という元号は、あらゆる物に対して不信感を抱いていた平成の世の国民の非難や嘲笑によって迎えられた。
ところで、この時代は二つの技術と一つの発明によって特徴づけられることとなった。
コールドスリープに関する技術と脳内化学物質に関する技術の発展がもたらした「安楽装置」の発明。人類はコールドスリープにより死を克服し、脳内化学物質を操作することで苦しみを取り除き、幸福感だけを享受できるようになったのだ。
「安楽装置」の台頭の結果、多くの国民が安楽装置を受け入れ幸感に包まれながら未来永劫の眠りについた。