2018-06-27

魔法使いじゃない

──カチッ、カチカチ

「えっー、どうして」

自室にあるハロゲンヒーターの電源を何度も入れても、ランプがオレンジ色になることはなかった。

コンセントちゃん差してあるし、見た感じ損傷しているところはどこにもなく、寿命にはまだ早すぎる。

問題は中か」

そうは言っても素人なので、どうすることも出来ず「うーん」と唸っているとノック音が部屋に響いた。

「はーい」

「お父さんだが、いまいいか

「うん」

返事をしながらドアを開けると、父が私宛てに届いた手紙を持って来てくれたようだった。

手紙を受け取り、礼を告げると父は不思議そうな顔をしながら口を開いた。

「なんか部屋、寒くないか

「あー、うん。ハロゲンが壊れちゃったみたいで」

事情説明すると父は、「少し待ってろ」と言いハロゲンを持って自分の部屋へと入っていった。

それから、父の部屋の前で十分ほど待っているとドアが開いた。

「こんなとこで待っていたのか。風邪引くぞ。早く入りなさい」

急かされるように父の部屋に入ると、先程までその役目を果たしていなかったハロゲンヒーターがランプをオレンジ色に光らせ部屋を暖めていた。

「直ったの?!」

「ああ、もう大丈夫だぞ」

「えぇ~~、すごい!」

この短時間ハロゲンを直した父に驚きを隠せず、落ちてしまうんじゃないかというくらい目を見開いた。

「大したことじゃないさ」

「大したことだって! すごいよ、すごい。すごいって!!!

──魔法使いみたい!!!

ただ純粋にそう思った。

魔法使いじゃないからな」 

驚き過ぎて、「どうしてわかったの」という言葉が喉から出てこい。

「…どうしてわかったの」

やっと出てきた私の言葉さえ、父にはわかっていたようであった。

「そりゃぁ、お父さんだからな」

父はハロゲンを直したときよりも、得意気な顔をしていた。

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