目的地よりひとつ先の駅で降りてしまったので、歩いて戻っていたら、いつの間にか周囲は山がちになってきて、目の前には壁のような急斜面が迫ってきた。
それは足が軽く埋まるくらいの黒い土でできており、なぜ崩れないのか不思議なくらいの角度でそびえ立っていた。横を見ると普通にのぼっている人がいたので、いけそうだと思って足を進めた。
しかし、のぼればのぼるほど土に足を取られ、ますます急斜面になっていくような気がした。もはや見上げるほどの角度になっており、のぼった先も見えなくなった。
ついに四つん這いになり、おかしい、こんな道があるはずがないと思って難儀していると、すぐ後ろから来た制服姿のJKが颯爽と歩いてのぼっていくではないか。
なぜだ、なぜあんな華奢な子がこんな道を軽やかにのぼって行けるのだ…。
いや待てよ、あのスカートでこの角度なら、絶対に見えるはずだ。何も不自然じゃない。きっとそうだ。こんな道、もうのぼれなくったっていい。
そう思って足を止めて見上げた瞬間、とつぜん背中に重力を感じ、落下直前の感覚が全身を襲った。高い!落ち――
そこで脳は覚醒した。しかし、体には依然として足がすくむような高所の感覚が残っており、おそるおそる慎重に体を起こした。少し間を置いて、ようやく体も夢だと気付いた。
あの土の壁は何だったのか。横をのぼって行ったJKは何者だったのか。なぜ自分はのぼれなかったのか。
パンツは、見えなかった。