学生時代、私はなんで生きているんだろうと本気で悩んでいた。とにかく、みのまわりのことに何でも疑問を持っていた。考えることが楽しかった。
放課後や休日は哲学系の本を読んだりして、考えた。下宿の部屋に引きこもって単調だったけど、いつか自分が死ぬ瞬間や宇宙の果てに思いを馳せてそれはそれで充実した生活だった。図書館は本当に多くの本が置いてあって、夏は涼しかったので今日みたいな暑い日は図書館で過ごしてたっけな。
そんな学生時代は長く続けられなくて、仕方なしに就職した。「どうして私は生きているんだろう」と考え続ける仕事など存在しないので、それなりに興味をもっている内容の職種についた。しかし、激務で心を壊し思考のすべてを失ったと感じた。ただ眠れないということが、こんなに辛いとは知らなかった。
私は逃げるようにして転職した。流れ着いた先は片田舎の限界集落みたいなところで、仕事はゆるかった。枯れた心はミルミル癒やされ、定時帰りの週休2日という幸福をかみしめている。
仕事が楽になって、心も楽になったはずだった。だけれども、あの頃感じた世界に対する疑問というものは湧いてこない。なんだか、ただ現実を乗りこなしているだけで生きているという実感がない。