祖父はもうボケていて祖母が死んだと聞かされても「そうか」とぽつり言ったと、ただ防腐処理のために連れ出される祖母を見てよたよたと歩いて出てきた
叔父と母は「わかってないのかもしれない」と言ったが祖父はボケていなくても祖母が死んだら「そうか」の一言で済ませる気がしている
感情表現の下手な一族だ、祖父が介護が必要になってから「君と結婚してよかったな」とつぶやいたと祖母から聞いたことがある、結婚して50年初めて聞いたと
告別式は明日かと祖父に聞かれた、葬儀に呼ぶ親戚の話にも時折口を挟んでくる、祖父は私が小学四年生のときの自由研究で宇宙についてをまるまる書いてくれた、私は清書もせずに提出した
優しい心のまま、ひとのことを心配して亡くなっていくような人になりたいと思った。