むかしむかし あるところに王さまがいました。
おうさまはくにをおさめてましたが、あるひ、おうじさまにくにをまかせることにしました。
「わしはこれから本をかく。このくにのえほんをかいて、こどもたちにつたえるのじゃ」
しかし、こまったことに王さまはえがかけません。これではえほんがつくれません。
そこで王さまは、まちにおふれを出しました。
「わしといっしょにえほんをつくろう」
しかし、そのうちいっしょにつくろうと、たくさんのひとがおかねをあつめました。
そして、あつめたおかねでえをかいたり、えほんをつくるためのかみやえんぴつ、ひもをたくさんよういしました。
こうして「あるくにの王さま」という本ができました。
おかねもいっぱいあつまりましたので、本もたくさん、つくることができました。
だけど、王さまはなやみました。
「このえほんをかうには、おかねがないといけない。こどもにはかえないかもしれない」
そこで、王さまはひらめきました。
まほうつかいは、えほんを見られるおまじないをつくり、たくさんのくににおしえました。
もちろんお金はいりません。王さまはたくさんおかねをもってましたから、もうおかねはいりません。
こうして、王さまのえほんは、だれでもみられるようになりました。
ですが、なんだかようすがおかしいです。
くにの人たちがおうじさまのところにたくさんやってきたのです。
「おねがいですおうじさま、王さまをとめてください」
「王さまのえほんのせいで、わたしたちはおかねがもらえなくなってしまいました」
これはたいへんだ、おうじさまはもっとたずねました。
「王さまはえほんにわたしをだすとやくそくしたのに、だしてくれませんでした」
あるひとは、つづけてこういいます。
「王さまのえほんをよんだひとが「王さまのえほんよりたかい!」といい、わたしのほんをみておこりだしました」
「「王さまをみならって、おかねなしではたらこう」と、いわれてにげてきました。これではおなかがすいてうごけません」
そうです。王さまがつくったほんは、みんなのがんばりで作られたもの。
なのに、みんな王さまがひとりで作ったと、かんちがいしてしまったのです。
おうじさまは王さまのいえにいき、いろんなひとのはなしをつたえました。
しかし、王さまはむねをはってこういいました。
「おうじよ、おまえは『おかねのどれい』になっているのだ。わしのえほんは、いろんなくにに『おかねのどれい』にならないことをおしえる、そんなえほんでもあるんだ」
おうじさまはどうすることもできず、がっくりするしかありませんでした。
さて、そんなおうじさまとまちの人のようすをみかねて、がっき引きがうたをうたいました。
「王さまはいじっぱり。おかねの代わりにいばりたい」
「みんなはえほんがたべられない。おなかがすいたよ、ぐーぐーぐー」
そのうたをきいた王さまは、がっき引きをくにからおいだし、またおふれをだしました。
「『王さまはいじっぱりでがめつい』といううたは、まちがいだ。わしは本がひろまってまんぞくだ」
「『えほんはたかすぎてかえない』というのもまちがいだ。えほんはじゅもん1つでよむことができる」
この2つのおふれに、まちの人もがっくりし、つぎつぎとくにをでていきました。
そして、王さまのまわりには、王さまをほめる人ばかりがあつまりました。
このまま、おうじさまのくにはどうなるのでしょう?
みんなも、まちの人やほんをいっしょにつくったひとのきもちになって、かんがえてみてください。
~おしまい~