出張でホテルに缶詰になっていたとき、機関車トーマスが放映されていたのが目に入った。
たしかに、機関車トーマスは子供向け番組だ。ストーリーも教訓めいたものだし、陳腐なものだ。
しかし、子供向け番組であっても背景に目を向ければとても素晴らしいことに気づく。これほどまでに異国の風俗に憧れを抱いたのは、トーマスの世界をおいて他にない。駅の構造、そこで働く労働者たち、貴族制が背後に透けて見えるトップ・ハット卿。クリスマスを前に華やぐ街の雰囲気は日本の正月のようなものなのだろうか。機関車に顔があってストーリーが単純すぎることを除けば、きかんしゃトーマスがイングランドの空気感を漏れ無く伝える非常に良い作品であることは間違いない。
この物語は含蓄に富んでいる。顔を持ち、自由な意志を持つように思われる機関車たちは、どこまでもレールの上しか走ることが出来ないのだ。