2015-01-14

その先輩はとても落ち着いていて、よく笑い、仕事が出来る。

上司には可愛がられ、部下の面倒見は良い。

私はその先輩の部下であるが丁寧に、丁寧に何度も何度も指導してくれた。

同期の仲間も多く、コミュニケーションも明るく丁寧で嫌みがない。

彼は仕事をしっかり終わらせ、定時に帰る事が多いので彼女家族がいると思っていたが、そうでもないらしい。

しかし、彼は「私は君たちを拘束する権利はないから」と言って後輩を飲みに連れて行ったことはない。

頑に距離を取ろうとしているわけでもなく、誘えば付き合ってくれる。

流行イケメンという感じではないが、清潔感があり、女性の受けも悪くない。そして、優しい。

押し付けるような優しさでないが、私が困りそうだな、と思うと彼は声をかけてくる。気が利くというか細かいところにも目を配っているのだと思う。

そんな彼を私は飲みに誘ってみた、

男同士の飲みの席、彼は自分から話題を発する事はあまりない、誰かの言う事に相づちを入れたり、誰かの言う事にひたすら笑ったりしている。

そんな中で少し下世話な話になる。女性の話だ。

相変わらず彼はけらけら笑っている。しかし、私は彼の顔が曇るのも見つける。

彼は童貞であった。

三人の飲みの席であったが、私と私の同期は驚きを隠せなかった。

私は女の人の経験がないというのは、度胸がない人の事を言うのだと思った、女の人がわからなくて、怖くて目も見れない。

誰も来るはずないのに待ち続けている、そういう人が童貞になるのだと思っていたのだ、

しかし、先輩は違う、女性を前にしても目を見て楽しそうに話しているし、多分待ち続けても女性が寄ってくるタイプの人である

未だに不思議でならない。

彼は「成就すると冷める自分が怖すぎて」と語っていた。

私はこの世に新たな童貞がいる事を知る。そこそこモテ仕事が出来る童貞だ。

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