2014-05-16

ビリー・ミリガン Q

木曜5時に○○図書館でAと会った。

「こないだカップ焼きそばを食べようとしててさ、お湯を流しに捨てたときに「どぐん」って音がしたんだよ。で、急にお前とBに会わなきゃ、って思ったんだ。」

けったいな話やなー。ってゆうかさ、何なんお前。わけもなく絶交したと思ったら。」

「悪かったな。「どぐん」っていう音を聞くまでの俺は俺じゃなかったんだ。なんていうかさ、誰かに乗っ取られてるような感じ。」

ビリー・ミリガンか?」

俺はつい先日読んだ本にインスパイアされていた。

「は?なんだそれ?」

読書家のAが知らないなんて。

「まあいいや。で、話ってなんだよ。」

「そうそう。俺とお前とBで防空壕跡に探検に行ったの、覚えてるか?」

「ああ、夏祭りだろ。エロ本拾えなくて残念だったなあ。」

「違うよ。防空壕の中で変な声したろ?」

「は?おまえ夢でも見てるんか?」

「いや、で、後ろ振り向いたらなんかさっと通ってさ、おれが崩れたろ?ほんと覚えてないのか?」

「ああ、そんなこともあったなあ。で、それが何だよ。」

「あのとき、おれが一週間くらい学校休んで、おまえらとは縁を切るようなことしただろ?」

いやな記憶がよみがえってきた。このままAをぶん殴りたくなり、ぜひそうしてやろうと思った刹那

Bが現れた。

「わりいわりい、ホームルームが終わんなくてさ。で、どうした?」

Aは再び同じ話を繰り返した。

Bも当時の記憶ほとんど覚えていないようだった。

一方、俺はAの話を繰り返し聞いたことで、記憶が鮮明によみがえってきた。

「でさ、俺、あのとき通り過ぎた何かに精神をのっとられてたんだよ。」

「は?ビリー・ミリガンかよ。」

「なんだそれ?」とBが言った。

「めんどくさいからいろいろ省略するけど、簡単に言えばまあ多重人格障害ってやつだよ。」

「ああ、サイコな。」

映画オタクのBがうなずいた。

「で、おまえがそういう状態だったっていうのか?」

だっておかしいだろ。おれたち三人でエロ本探検隊だったんだぜ。それを一番よくわかってたのが俺だ。その俺がお前らを裏切ったんだ。不思議だろ。乗っ取られてるだろ?」

「まあ確かにあれ以来おまえは別人のようだったな。」

つづく

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