二十歳のときに睡眠薬を中途半端に大量に飲んで自殺未遂を起こしたことがある。
『大量に』とは言っても、睡眠薬七錠ほど。ほんとは四十錠ぐらい一気に飲まないと死なないのに。
だから本当は死ぬつもりなど無かったのだろう。狂言自殺をしたかったのだろう。
かまってちゃんだったなぁ。本当に。真性のかまってちゃんだった。
二十時間ぐらい眠っていた。起きると母親が泣きながら自分のほっぺを殴っていた。
「なんでね!なんでね!」僕は結局その時何も思わなかった。
後日、自分は自殺するほど家族に追い詰められてたという話をしても
母親は「うるさい!」というだけ。
その時は本当にショックだったけど、同時にあの時が、本当の人生に目覚めた瞬間だったのだと思う。
あぁ、母さんは、僕が死のうがどうなろうが、どうでもいいんだ。
『人は人を救わない。それがたとえ、自分の子供だったとしても』
カイジの会長の言葉が、あのときほど鮮烈に自分に焼きついたことはなかった。
『人は人を救わない』
そう、人は人を救わない。たとえ家族だとしても。だって自分を救えるのは自分だけ。
だから『母親が悪い』とか言ってクズになっていくのはやめよう。
そう思いながら生きているうちに、少しずつだけど自立できるようになれた。