増田は、異次元の様な白い建物の中を走っていた。一つドアを開けるとそこには大きなシャワールームで、白人の裸のおっさん達が小汚い尻を向けてシャワーを浴びていた。そして皆こちらを振り向いた。そして、ゾロソロと向かってくる。増田は嫌悪感で慌ててドアを閉じて、白い階段に向かいそこから逃げ出した。後ろからは、裸のおっさん達がゾロゾロと追いかけてきていた。身体からは湯気が出ていて、皮膚が溶けて、赤い肉がむき出しになり、ゾンビの様な姿になって階段を登ってくる。そいつらを突き落としながら、上階のドアに辿り着く、間一髪ドアを閉じてゾンビおっさんから逃れると、そこは城の中だった。高い天井の教会の様な長い、薄暗い通路の中にいた。
大きな開け放たれたドアの前を通り抜けようとする時に、中の部屋を覗くと幾つもの棺桶が置かれていた。それらが一斉にガタガタと音を立てて開いた!そして、滑らかな生地のドレスを着けた女達がゆっくりと起き上がって興奮した状態で増田に向かって来た!女の目はランランと赤く光り、開いた口の中には尖った歯が見えた。女が近づいてくるにつれ、恐ろしさよりも、甘い身体の香りと女の美しさの感覚が強烈になっていった。
増田は逃げようとするどころか、全てを女吸血鬼に捧げたい!という気持ちに逆らえなくなっていた。全てを吸い尽くして欲しいという甘美な感覚が腰から脳へと登っていって、思考は気だるく、霧の中で漂っているような感覚。女の身体の甘い香りと柔らかい肌に包まれたいという感覚が霧の様に身体にまとわりついていた。近づいてきた女に増田はそのまま抱きついた。牙の生えた唇に口付けし、局部を相手の恥骨に押し当てる。(全てを吸い尽くしてくれ!)増田はより強く腰を擦りつけた。強いエネルギーが唇、心臓、腰から女に向かって吸いだされていった!その快感に増田は我を忘れた!
(全てを!全てを!吸い尽くしてくれ!)
射精の感覚で増田は目を覚ました。直ぐに夢だと気が付いたが、下着の中を見るまで、射精をしたとは信じられなかった。
あの現実感、快感は夢だと判っていても、まだ、身体に残っている。
あれがサキュバスというものかもしれない。汚れた下着を洗いながら、増田はそう思った。
そして、もしサキュバスが現実にいるとしたら、いったい何のために男の性を吸い取っているのだろう?そういう取りとめない事を思いながら濡れた下着を片付けた。
また、同じ夢を見る事が出来るだろうか。しかし、そういう事をすると次第に命が削られていくという話もある。しかし、女性との関わりを何十年も持った事のない増田にとっては、そんな事はもうどうでも良かった。
また見れるだろうか。そうなればいい。俺の全てを与えてやる。