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2021-09-30

人格を有する絵

鴨居玲という画家がいる

容姿端麗で絶大な画力を持ち、画壇の寵児であった彼だが、常々自分作品空虚さに悩まされていた。そんな彼が描く絵には、常に苦悩の跡がある

廃兵の絵、田舎の酒飲みの絵、ギャンブルに興じる猿のような顔をした男達の絵、ピエロの絵。叫ぶ聖女の絵

そんな彼の遺作は、自画像である

自画像は、自らの表皮を仮面として被り、その仮面を軽やかにはずしている。諦めの色の染み付いた仮面の下からは、口も目鼻もないつるりとした、電球のような頭部が覗いている


結局、彼は何十年にも及ぶ画家としての人生の後に、空虚へと辿り着いてしまったのである

仮面の下に浮かぶ歴然とした空虚がそれを物語っている

絵には人格など無かった、自分自身にさえ、人格と言えるものなど無かった

全ては仮面に過ぎなかった。何も無かったのである


彼はその自画像を遺し、ガス自殺にて生涯を終える

何十年にも渡って行われた真摯な挑戦において、彼は敗北した。彼と彼の絵は、終に人格を獲得することなく終わったのである

 
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