放課後の教室、好きな女の子と二人きりになれたことがあった。
日直だった。
雑務を終わらせてからも二人で教室に残り、話し込んだ。
笑顔の可愛い子だった。
ふいに彼女が「増田君って、他人は馬鹿で、自分のことを賢いと思ってるでしょ」と言われた。
悪意のない抑揚で、悪気を感じることはなかった。
でも、咄嗟に何も言い返せなかった。
なんだか見抜かれている気がした。
生まれてから一番恥ずかしいと心の底から思えた。
俺は思わず目を逸らした。
彼女からも。自分からも。
あの言葉と、彼女と一緒に過ごした教室の様子が今でも度々頭を過る。
十年経った今でも鮮明に。
今では自分のことを他人より賢いだなんて思うことはない。
むしろ大馬鹿野郎だ。
告白さえできなかったのだから。
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