私は面倒くさがりで、職場のマグカップを洗うときにも洗剤をろくに使わず、せいぜい水ですすぐくらいだ。そのため、気づけば真っ白なマグカップに茶渋がびっしりと付いている。久しぶりに激落ちくんで拭ってやったときに、元々の色に驚いてしまう。こんなに白かったのだな、と。
似た驚きを、歯医者に行くたびに感じる。毎日丁寧に磨きはするものの、磨き残しはあるもので、どうしても歯垢だの歯石だの不衛生なものが口の中に残る。それを専用の器具でコリコリと削ってもらうとき、えも言われぬ快感がある。そして、つるつるになった歯を下で舐めては満足する。
どうも私には、溜め込んだ汚れを一息に片付けてしまうのに快楽を覚えるたちらしい。
思えば、電車などでお手洗いに行きたくても行けず、何とか間に合ったときに一気に放出する時の快感もそれに近い。絶対に身体に悪いだろうなと思いながらも、今いいところだからとゲームの席を立てない人も、そこに快楽を見出してはいないだろうか。
そんなことを、ほうじ茶や緑茶、紅茶やコーヒーのタンニンが染み込んだマグカップを傾けながら考えた。近々、激落ちくんを職場に持っていくことにしよう。今度こそ洗剤でマメに洗おうと決意しながら、きっとその決意は守れない。濡れた爪でこすったときの、茶渋の中の白い輝きが忘れられない。地層みたいになった、少しずつ色合いの異なった茶色の縞模様を見ている。