大学の頃、付き合っていた彼女から「増田ってカフェイン抜きのコーヒーだよね」と言われた事があった。
そのときは要領を得ず、僕はカフェイン抜きコーヒーが好きなわけでもなければ、彼女の前で飲んだことがあるようにも思えなかった。
ただ優柔不断なことは自負しており、単純にそのことなのだろうなと僕は高層レストランの窓をうっすらと見ながらそう考えていた。
その後社会人となって関係を持ったのは同僚の女の子で、彼女からも「増田さんは、カフェイン抜きのコーヒーみたいですよね」と言われた。
彼女は快活な子で、嫌味を口にするような女の子ではなかったから驚いた。
だからそういうものなのかと思い直すことにしたものの、やはり違和感は拭えなかった。
今にして思えば、どういった意味なのか直接的に問うべきだったのかもしれない。
そして先月のこと。
お金を払って一緒に寝た相手から「あなたって、カフェイン抜きコーヒーよね」と言われたのだ。
なるほど、と僕は服を着ながら思った。彼女は最後、僕に抱きついてキスをする。
でも僕はカフェイン抜きらしい。
どうやら僕は、そういう人間らしい。