言ってはいけないことを言った。
「そんなに僕のことが嫌?」って聞かれて、どうして「うん。いやだよ」なんて答えたんだろう。
嫌なわけないって最初に言っても、信じてもらえなかったから。信じてもらえるわけがないから、当たり前だったのに。
「もういいよ、帰って」って言って離したら、それまで何回離そうとしたっていたいくらい握られていた手が、あっさり遠くへ行ってしまった。
本当は、こんな言い合いにつき合わせたって傷付けるから、これじゃダメだと思ったから、そんな言い方をした。本当は謝って、一緒にいたかった。
「わかった、帰るね、ひとりにしてごめん、気をつけて帰ってね」って言って、改札へ向かうとき、振り向いてくれたなら、やっぱりもう一度引き止めればよかった。
あんな帰り方、どうしてさせたんだろう。
電話が切られてから、心配で、家まで行った。ごめんって謝りたくて、ちゃんと話したくて。
でもまた私の言葉が、存在が、傷付けてしまうんじゃないかと思ったら、怖くて、そのまま帰ってきてしまった。
次の日の朝、謝らせてほしいと送って、文を考えていたら、電話をかけてきてくれた。
言いたいことがうまく言えなくて、そのまま電話が終わって、後になって言いたいことを書き連ねただけの迷惑な文を送りつけた。
それでもあんな別れ方が、電話が最後になるなら、怖がらずにちゃんと家まで行けばよかった。
今もまだ、私の言葉で傷付いているなら。
たくさん泣かせて、怒らせたせいで、掠れて、すごく聞き取りにくい声とか、
「またね」って言葉が、頭にこびりついて、離れない。