頭部を横からギロチンで真っ二つにしたとき、前髪の生え際を刃がかすめることはない。もっと後ろにあるからだ。
幼少期の記憶をたどると私が4歳ぐらいの頃、父親に肩車されて毛を引っ張ると「抜けるからやめろ」と注意された記憶がある。
そのときの父の年齢が37で、髪の減り具合は私と同じぐらいだったと思う。
禿の遺伝は母方からのみというのは嘘だと最近の学説で明らかになっているがまさにそのとおりだ。
そもそも思い出せる祖父の髪が4人とも彡⌒ ミなので終わっている。
父親の現状を見ると完全に剥げずに彡⌒ ミで踏みとどまるタイプのハゲのようだ。
髪の毛が横に残っているのだからいいと思うか?
実際は何の意味もない。
横に残された髪はかつて頭頂部に広がっていた茂みを想起させ、それが失われたことを見るものに思い出させるのだ。
生え際を目で追えるから人は生え際を見つめるのであり、もしもそれが追っても追ってもどこにも既にないことを知れば人はそれを追わなくなる。