2月末に「終わりにしたい」って言った。
昨年の流行歌が脳裏をよぎって、状況にそぐわないと思いつつ、何故か吹き出しそうになった。
これであの人もあの曲の通りようやく笑ってくれるかしら、と思った。
しかし、何を血迷ったか、数日後にあの人は「妻に離婚を申し入れた。届出が終わったら、僕と付き合ってください」などとのたまった。
ええ、はい。こちらこそよろしくお願いします。なんて情けない回答をして、そうか、身に余る喜びを享受した時、わたしはこんなふうに壊れるんだ。と、初めて知った。
それから一月以上が経過して、相変わらずあの人は奥さまと暮らす家に帰るために21時になる前にはわたしを電車に押しやる。
そんなことを言ってジョッキに口をつける彼を見てると、やっぱりあの時受け止め損ねてわたしを壊した喜びは、わたしが得るべき喜びじゃなかったんだな、なんて卑屈な納得をしてしまい、
「なんだ、相変わらず普通に仲良くしてるんですね」
なんて可愛くない返事をしてしまった。
そしてあの人は冷めたピザを頬張りながら
「それに何て答えりゃいいの?」なんて不機嫌そうにつぶやいた。
週末にも約束してる。きっとあの人はうちに上がりたがるだろう。
初めて肌を重ねた時は、ずっとこうしたかった、なんて感極まったりしてたけど、近頃は抱き合いながら孤独とキスしているだけに感じて、あの時間が来るのが恐ろしい。
職場にのりこんじゃえ